こんにちは!ハジメです。
今日は、僕が看護師として5年目のころに、新人看護師から相談されたお話です。
「新人でも仕事はできて当たり前」という扱いを受けた新人のAさんは、先輩から十分な指導を受けられず、できない仕事に直面したときに大変な思いをしたという経験があります。
僕は直接指導できる立場ではなかったので実際に現場を見たわけじゃないですが、話を聞く限り本当に大変だったようです…。
Contents
十分な指導を受けられない新人看護師Aさんの相談
「もうそんなこと出来て当たり前でしょ。」
「できないじゃなくてやらないと。」
新人のAさんは、先輩からこんな言葉を投げかけられました。
「じゃあ、お願いね。」それがあたりまえの職場
新人のAさんは短大を卒業し、循環器内科病棟に入職しました。病院の中ではICUに次ぐ、急性期患者の受け入れが多い病棟です。
重症循環器患者だけでなく、呼吸器内科や腎臓内科の重症患者の受け入れ先として、シビアな現状も目にすることが多い現場です。
しかも、勤務している看護師は若年層が多く、2年目が1年目を教えるのは当たり前。人手不足ということもあってちゃんとした指導を受けられず、「じゃあ、お願いね。」と仕事を投げつけられることが多く、自力で成長するほかないような環境でした。
初めてする手技、初めて受け持つ重症患者、診療の補助、自分も教えてもらいたいのに学生指導をしないといけない。そんな「あたりまえ」の中で、必死に一人前の看護師になるように、みんなに認めてもらえるように気を張り詰めていた。とAさんは言います。
初めての重症患者、急な診療の補助
Aさんが入職して1か月、先輩看護師に聞きながら仕事の流れをやっと掴みはじめた時期です。
受け持ち患者も2人から始まり、ようやく5人を受け持つことができるようになりました。
5月のある日、Aさんはリーダー看護師からこう言われました。
「悪いけど今日、呼吸器ついてる患者受け持って。」
その日の出勤する看護師がギリギリで仕方ないからという理由でした。
5人受け持つようになったとはいえ、任されていた患者は医療依存度の低い、病状が安定した患者ばかり。
実習でも呼吸器を装着した患者を受け持ったことはなく、もちろん事前準備もしていません。
何を観察したらいいのか、正常や異常、観察するときの注意点、何を申し送ればいいか。なにもかもわからないことばかり。
でも、任されたからにはやらないといけない。情報収集をしたあとはマニュアルを見ながら必死にケアをしたそうです。
「出来てあたりまえ、やれて当然」の環境はつらい
人数がギリギリなので先輩にも頼れない状態で…Aさんは「その日は不安しかなかったです」と言いました。
また、「CV挿入や胸腔穿刺の診療の補助について」と言われた。など、Aさんに起きたたくさんの恐怖を話してくれました。
必要な物品もどこにあるかわからない、手順もわからない、なにをどのように補助したらいいのかわからない。というのは、とても不安だったと思います。
あるいは、あまり話したことのない先生に「できない看護師」と思われるのも嫌ですよね。
できないことに対してキャパシティのオーバーした仕事内容と、教育がなされない状況へのストレス。出来てあたりまえ、やれて当然の環境はとてもつらかったと思います。
厳しい環境でどう対応するか
教育担当の僕は、Aさんの環境を変えるほどの力はありませんが、少しでもAさんの仕事が楽になればいいなと思い、ちょっとしたアドバイスをしました。
看護師として「できる」ようになること
このような厳しい環境では、「できないのがつらい」「わからないのが不安」というのが、一番大変なポイントです。
問題の根本は、Aさんが充実した指導を受けられず、知識が不足していることです。話を聞く限り、Aさん自身に学ぶ力や応用力はあるので、そこさえ解決できれば、気持ちよく仕事ができるはずです。
そこでまずAさんに取り組んでもらったのは、本やネット、動画を利用した勉強です。
心電図や呼吸器管理、透析患者の看護など、自分で勉強するには限界があるものや、理解できない知識については外部の勉強会に参加するようアドバイスしました。
動画サイトなどで手技の確認をするのは手軽な方法なので、通勤時間にチェックしておくように勧めました。
本は実技のもので写真がわかりやすいものをいくつか紹介すると、すぐに購入して勉強を始めてくれました。
自分が現場で行った内容と照らし合わせて、自分の職場で使っている物品に置き換えて手順書を整理することも、実践でできるようになるためにはとても大切なことです。
忙しくても「相談」することに慣れる
「やったことがなくて不安です。」
「初めてなので教えてください。」
と、先輩看護師や先生に言えない、というのも問題のひとつです。
看護師として先輩や医師に相談することは、新人じゃなくても絶対に必要なことなので、それを恥じる必要はまったくありません。
もちろん忙しくて相手をしてもらえないこともあるかもしれませんが、落ち着いているときに時間を割いてくれたり、丁寧に指示をくれることもあるはずです。
そういうことの繰り返しで、手技も知識も人並みの看護師になっていくのだと僕は考えています。
自分で勉強するだけでは限界があります。素直な気持ちで、「できない」「わからない」を伝えることで、わからないことは教えてもらうという、そんな当たり前の環境ができてくるのだと思います。
「できて当たり前」の環境を打開する方法
教育環境にめぐまれなくても、工夫とちょっとの勇気で状況を変えることはできます。
「看護師として成長したい」という気持ちが大切
職場環境はいろいろあるので「これが正解」という解決方法はありません。
- 自分で勉強する
- 同期で練習・勉強・共有する
- 先輩に教えてもらう
- 環境を変えてしまう
など、いろんな方法が考えられると思います。
それでも一番大切なのは、「看護師として成長したい」という気持ちです。
今回のAさんも、Aさん自身に学ぶ気持ちがなければ、仕事がつらいまま成長しなかったと思います。おそらく、環境に合わずに転職することになっていたのではないでしょうか。
もちろん、綺麗ごとの「成長したい」じゃなくても良いと思います。
- 先輩から怒られたくないから成長したい
- 先生に良いところを見てほしいから成長したい
- 楽に仕事をしたいから成長したい
など、そういう気持ちでも大丈夫です。
セルフマネジメントをできるようになろう
現状を打破するためには、自分自身のセルフマネジメントが必要です。セルフマネジメントとは、看護師が患者に対して行う教育的指導の一つでもありますよね。
自分を支えるのは自分自身、ということはしっかり意識しておきましょう。
セルフマネジメントのためには、何に困っているのかという問題を明確にし、明確になった問題を解決する具体策を日々の業務の中に即して考えていく必要があります。
自己効力感を持ち、自分自身を信じて取り組むことが重要です。
看護師は悩んで成長する仕事
新卒には新卒の、5年目には5年目の、10年目には10年目の悩みや不安があります。
何年看護師をしていたって、知っていて当たり前ということばかりではありません。
知らないことを素直に受け止め、新しいことを取り入れようという姿勢は、どんなにベテランになっても忘れないようにしましょう。