【小児循環器】酸素投与をしてはいけない心疾患って?

ハジメの小児循環器

看護ログ
ハジメ

突然ですが質問です。
SPO2が低い時やチアノーゼが見られる時の初期対応で思い浮かぶものは?

多くの人が「酸素を投与する」と答えるんじゃないでしょうか。

でも、ちょっと待ってください。小児循環器科の患者さんの中には簡単に酸素を投与してはいけない患者さんがたくさんいるんです。

酸素化が悪いのになんで酸素を投与してはいけないの?ということで、今回は酸素投与をしてはいけない心疾患についてお話します。

酸素投与ってなに?

酸素投与は、簡単に言えば身体への酸素供給が足りない時に補ってあげるものです。

酸素不足は全身の組織に悪影響を及ぼすので、基本的には酸素投与が必要になるのですが、酸素は様々な作用をもっています。

その中で注意してほしい作用が2つ。

    • 肺動脈の拡張作用
    • 動脈管を閉じる作用

小児循環器に関わっている人なら、これだけは絶対に覚えておきましょう。

①肺動脈の拡張作用

まず、酸素投与をすると肺動脈が拡がります。

血管が拡がるってことは血液が流れやすくなりますよね。

元々、肺に血液が流れやすい疾患である、

  • 心室中隔欠損症(VSD)
  • 心房中隔欠損症(ASD)
  • 動脈管開存症(PDA)

これらの左右短絡疾患(左心系から右心系に血液が流れやすい心疾患)は肺血流の増加で心不全になったり、呼吸障害をきたすことがあります。

 

次に、肺静脈狭窄・閉塞を併発しやすい心疾患である

  • 総肺静脈還流異常(TAPVC)

肺静脈狭窄・閉塞で問題になるのは、肺に流れた血液の出口が狭くて肺が水浸しの状態、いわゆる肺うっ血ですね。

肺うっ血が進行すると、酸素化が余計に悪くなっていきます。

これらのような疾患に、肺に血液が流れやすくなる酸素を投与すると、どうなるでしょう?

心不全症状や呼吸障害が進行してしまいます。

看護ログ
ハジメ

肺血流が多くなる、肺うっ血のリスクがある心疾患は基本的に酸素投与するのはダメと覚えておきましょう。

※肺高血圧が進行していたり、酸素化が保てなくなるので、上記の心疾患でも酸素投与をしている場合はあります。各病院での治療方針によっても変わると思うのでこちらも注意してください。

②動脈管を閉じる作用

胎児の時に必要な動脈管ですが、出生すると動脈管は不要になるので通常は酸素を取り込むことで徐々に閉じていきます。

先天性心疾患の中には、動脈管が閉じるとショックになってしまう疾患があります。

ここも分けた方が説明しやすいので、左心系と右心系に分けちゃいますね。

まず左心系の疾患で言えば、

  • 左心低形成症候群(HLHS)
  • 大動脈離断(IAA)
  • 大動脈縮窄(CoA)

左心室から大動脈を通って全身に血液が流れにくい、もしくは流れない心疾患です。

これらは動脈管を通って全身に血液が流れていくので、動脈管が閉じてしまうとどうなるでしょう?

ショックになってしまいます。ダクタルショック(ductal shock)といいます。

看護ログ
ハジメ

ダクトは「管」みたいな意味なので、動脈管由来のショックって考えてもらったら覚えやすいかな。

酸素投与をすることで動脈管が閉じてしまうので、これらの心疾患にも酸素投与は基本的に禁忌です。

 

次に、右心系だと

純型肺動脈閉鎖(PAIVS)や、高度な肺動脈狭窄(PS)を伴う疾患などです。

右心室から肺動脈に血液が流れにくく、動脈管を通して肺に血液を流しているので、動脈管が閉じると肺に血液が流れなくなってしまいます

肺血流がなくなると酸素の取り込みができず、低酸素血症になってしまい最悪ショック状態に。

動脈管依存の心疾患はプロスタグランジン(PGE-1)製剤を投与していることが多いと思います。

そういった患者さんを受け持つ時は、酸素投与は動脈管を閉じる作用があることを頭においておくことが大切です。

まとめ

高肺血流・肺うっ血を生じる疾患で酸素投与すると肺に血液が流れ過ぎるのでダメ!

酸素は動脈管を閉じる作用があるから動脈管依存の疾患に酸素投与はダメ!

この2点を理解しておけば、「この患者さんって酸素投与しても大丈夫?」と聞かれても答えられるようになるでしょう!

タイトルとURLをコピーしました